ABC分析とは?EC事業者向けのやり方と在庫・利益の改善手順

「商品数が増え、どの商品から改善すべきか分からない」「売上は伸びているのに、在庫と広告費が増えて利益が残らない」。こうした状態では、すべての商品へ同じ時間と予算を使うほど、重要な商品への対応が遅れます。

ABC分析とは、商品を売上高などの貢献度が高い順に並べ、A・B・Cの3グループに分類する方法です。限られた人員、広告費、在庫資金を、効果の大きい商品へ優先配分するために使います。

ただし、EC事業で売上高だけを基準にすると、売れているのに利益が薄い商品や、在庫資金を圧迫している商品を見落とします。本記事では、基本的な計算方法に加え、売上・粗利・在庫金額の3軸を組み合わせ、発注、広告、値下げ、終売へつなげる実務手順を解説します。

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ABC分析とは商品管理の優先順位を決める方法

ABC分析は、複数の商品や顧客を重要度の高い順に並べ、累積構成比によってA・B・Cへ分類する重点管理の手法です。

商品を貢献度順にA・B・Cへ分類するABC分析

商品の売上高を基準にする場合、一般的には次のように分けます。

ランク 累積構成比の目安 基本的な考え方
A 0〜70% 売上への影響が大きく、重点管理する商品
B 70〜90% 標準的な管理を行う商品
C 90〜100% 個別対応の工数を抑える商品

70%と90%は絶対的な基準ではありません。中小企業基盤整備機構の資料でも、分類レンジは任意とされています。商品数、季節性、利益構造、担当者数に合わせて設定してください。

重要なのは、A商品を「優秀」、C商品を「不要」と決めることではありません。ランクごとに確認頻度と施策の優先順位を変え、限られた経営資源を配分することが目的です。

ABC分析をEC運用で使うメリット

売上を支える商品が分かる

商品数が多くても、売上の大半を一部の商品が作っていることがあります。Aランク商品を特定すると、欠品防止、商品ページ改善、レビュー対応などを優先できます。

在庫確認の頻度を変えられる

すべてのSKUを毎日確認するのは現実的ではありません。Aランクは日次・週次、Bランクは週次・月次、Cランクは月次など、重要度に応じて管理頻度を変えられます。

実在庫を正しく確定する手順は、棚卸しのやり方と在庫差異の減らし方で解説しています。

広告費と改善工数を配分しやすい

Aランク商品は影響が大きいため、画像、説明文、検索対策、広告の小さな改善でも事業全体へ波及します。一方、売上の少ない商品すべてへ個別広告を出すと、管理工数と最低出稿額が積み上がります。

滞留在庫を見つけやすい

売上ABCと在庫金額ABCを並べると、「売上はCなのに在庫金額はA」という商品が見つかります。これは資金を寝かせている過剰在庫の候補です。

ABC分析のやり方をExcelで解説

ABC分析は、高度な分析ツールがなくてもExcelやGoogleスプレッドシートで作れます。最初はSKU別に、直近6か月または12か月の売上データを集めてください。

ExcelでABC分析を行う6つの手順

1. 分析対象と期間を決める

商品カテゴリではなく、原則としてSKU単位で集計します。同じ商品名でも、色やサイズ、容量が違えば売れ行きと在庫が異なるためです。SKUの意味と数え方を基準に、モールごとの商品コードを自社SKUへ統合します。

期間は、季節変動を含めるなら12か月、最近の変化を重視するなら3〜6か月が目安です。新商品と終売商品は、通常商品と分けて注記します。

2. SKU別の売上高を集計する

Amazon、楽天、自社ECなどの販売データを合算し、キャンセルと返品を除いた確定売上をSKU別に集計します。

SKU 商品名 売上高
A-001 商品A 2,400,000円
B-002 商品B 1,600,000円
C-003 商品C 900,000円
D-004 商品D 600,000円
E-005 商品E 500,000円

この例の売上合計は600万円です。

3. 構成比を計算する

各商品の売上高を売上合計で割ります。

売上構成比 = SKU別売上高 ÷ 全SKUの売上合計

商品Aは240万円÷600万円で40%です。Excelでは、売上高がC列、合計がC7にある場合、=C2/$C$7のように絶対参照を使います。

4. 売上高の大きい順に並べる

売上高を降順に並べます。商品名だけを並べ替えるのではなく、SKU、売上高、粗利、在庫など表全体を選択してください。

5. 累積構成比を計算する

1位から構成比を足し上げます。

商品 売上高 構成比 累積構成比 ランク
商品A 240万円 40.0% 40.0% A
商品B 160万円 26.7% 66.7% A
商品C 90万円 15.0% 81.7% B
商品D 60万円 10.0% 91.7% C
商品E 50万円 8.3% 100.0% C

累積構成比の最初のセルは構成比と同じ値にし、2行目以降は「直前の累積構成比+当該行の構成比」とします。

6. A・B・Cへ分類する

累積構成比70%までをA、90%までをB、それ以降をCとする場合、Excelでは次のように分類できます。

=IF(D2<=70%,"A",IF(D2<=90%,"B","C"))

境界をまたぐ商品をAとBのどちらに置くかは、社内で統一してください。分類結果そのものより、同じルールで継続比較できることが重要です。

売上だけでなく粗利と在庫金額でも分析する

EC事業では、売上ABCだけでは十分ではありません。少なくとも、売上高、限界利益または粗利、在庫金額の3種類を作ります。

売上・粗利・在庫金額の3軸で行うABC分析

売上ABC

販売規模と集客への影響を確認します。欠品防止、商品ページ改善、レビュー対応、販促の優先順位に使います。

利益ABC

売上から仕入原価、販売手数料、配送費、広告費などの変動費を引いた利益貢献で分類します。売上Aでも利益Cなら、価格、広告、配送条件、返品率の改善対象です。

限界利益の計算方法と組み合わせると、売上規模ではなく「1個売れたときにいくら残るか」で判断できます。

在庫金額ABC

SKU別の在庫数量に原価を掛け、在庫資金の大きい順に分類します。売上C・在庫Aの商品は、過剰在庫の可能性があります。

在庫金額 = 実在庫数 × 商品原価

売れ行きの速さは、在庫回転率の計算と改善方法でも確認してください。

3種類のABCを組み合わせた改善判断

一つのランクだけで判断せず、売上・利益・在庫の組み合わせを見ます。

売上 利益 在庫 状態 優先する対応
A A B 主力商品 欠品防止、広告・ページ改善
A C A 売れるが利益が薄い 値上げ、広告費、手数料、配送費を確認
B A C 隠れた高収益商品 露出・広告・関連販売を強化
C C A 過剰在庫候補 発注停止、値下げ、セット化、販路変更
C B C 小規模だが採算あり 自動化し、維持コストを抑える

売上A・利益Cは「売れているから安心」ではない

広告依存、販売手数料、送料、返品が利益を削っている可能性があります。売上を止めるのではなく、利益が薄い原因を分解します。

売上B・利益Aは伸ばす候補

販売数量は中程度でも、利益率が高く、返品や問い合わせが少ない商品です。商品ページの露出や関連商品の導線を強めると、利益額を伸ばせる可能性があります。

売上C・在庫Aは資金回収を優先する

追加発注を止め、値下げ、セット販売、別モールへの展開、仕入先への返品可否を検討します。ただし、季節前の商品や戦略的に確保した在庫は通常のC商品と分けます。

ランク別に決めるEC運用ルール

Aランク商品の運用

  • 在庫と欠品予定を日次または週次で確認する
  • 広告、検索順位、転換率、レビューを優先して確認する
  • 商品ページ変更は影響が大きいため、変更前後を記録する
  • 仕入先の納期遅延や価格変更に備える

Bランク商品の運用

  • 月次でAへの昇格候補とCへの低下候補を確認する
  • セット販売、関連表示、画像改善など小さな施策を試す
  • 発注点と安全在庫を標準化する

Cランク商品の運用

  • 広告と個別作業を必要最小限にする
  • 在庫が少なく利益が残る商品は、自動化して継続する
  • 在庫金額が大きい商品は、値下げや終売を検討する
  • 集客、品ぞろえ、交換部品などの役割がある商品は例外管理する

Cランクだから即座に削除するのではなく、商品が果たす役割と撤退コストを確認します。

ABCランク別のEC運用アクション

ABC分析で失敗しやすい7つの原因

1. 売上高だけで判断する

利益、在庫、返品、広告費を見ないと、売上は大きいが資金を残さない商品をAとして優遇し続けます。

2. 商品カテゴリ単位で分析する

大分類では、同じカテゴリ内の売れ筋と死に筋が混ざります。中小企業基盤整備機構の資料でも、ABC分析は基本的に単品で行うことが示されています。ECではSKU単位を基本にしてください。

3. 期間が短すぎる

セール月だけで分類すると、通常月の重要商品が下がります。基本は6〜12か月とし、最近の変化は別列で比較します。

4. 新商品をCと決めつける

販売期間が短い商品は売上が少なくて当然です。発売後90日など育成期間を決め、既存商品と別に評価します。

5. 季節商品を通常商品と混ぜる

季節前の在庫や販売終了直後の商品は、年間合計だけでは判断を誤ります。前年同時期と比較してください。

6. 一度作って更新しない

商品ランクは固定ではありません。売上、広告、競合、季節で変化するため、月次または四半期で更新します。

7. 分類しただけで施策を決めない

ABC分析はレポートではなく、優先順位を決める道具です。各ランクについて、担当者、実施内容、期限、確認指標を決めます。

小規模EC向けの月次運用手順

個人事業者や少人数のECでは、複雑な分析を毎週行う必要はありません。月1回、次の順で90分程度の確認から始めます。

  1. 前月までの6〜12か月分の売上を更新する
  2. キャンセル・返品を除き、SKU別売上を確定する
  3. 売上・利益・在庫金額のABCを更新する
  4. 前月からランクが変わった商品を抽出する
  5. 売上A・利益C、売上C・在庫Aを優先確認する
  6. 発注、広告、ページ改善、値下げ、終売のタスクを決める
  7. 翌月に結果を確認する

管理表には数値だけでなく、「判断」「担当」「期限」「結果」の列を設けます。分析と実行を同じ表へ残すことで、担当者が変わっても判断経緯を追えます。

ABC分析を内製するか外部支援を使うか

SKU数が少なく、販売チャネルが一つなら、Excelでも十分に運用できます。一方、次の状態では、データ統合や運用体制の見直しが必要です。

  • モールごとにSKUコードが異なり、商品別実績を合算できない
  • 売上は分かるが、広告費・送料・手数料を商品別に集計できない
  • 分析しても発注、広告、商品ページの担当へ反映されない
  • 毎月の集計だけで時間を使い、改善施策まで進まない
  • 商品数が増え、欠品と滞留在庫が同時に発生している

SIMPS JAPANのEC運用代行サービスでは、商品登録や広告だけでなく、売上・利益・在庫をつなげた改善体制について相談できます。すべてを外注するのではなく、社内で判断すべき業務と、集計・実行を任せる業務を分けることが重要です。

ABC分析に関するよくある質問

A・B・Cの割合は必ず70%・90%で分けますか

必須ではありません。70%と90%は例です。商品数や利益構造に合わせて、Aを80%までとするなど調整できます。ただし、毎月基準を変えると比較できないため、変更理由を記録してください。

ABC分析は売上数量と売上高のどちらで行いますか

目的で使い分けます。売上への貢献は売上高、出荷負荷や梱包資材は数量、利益改善は限界利益、資金効率は在庫金額で分析します。

Cランク商品はすべて廃番にすべきですか

廃番とは限りません。利益が残る、作業が少ない、主力商品の関連品である、集客入口になるなどの役割があれば維持する判断があります。

どのくらいの頻度で更新しますか

商品数や季節性によりますが、小規模ECは月次更新から始めると実行しやすくなります。季節変動が小さい場合は四半期でも構いません。

まとめ|ABC分析は分類ではなく優先順位を実行へ変えるために使う

ABC分析とは、商品を貢献度の高い順に並べ、A・B・Cへ分類して管理の優先順位を決める手法です。Excelでも、売上高、構成比、累積構成比を計算すれば作成できます。

EC事業では、売上ABCだけで終わらせず、利益ABCと在庫金額ABCを重ねてください。売上A・利益Cは収益改善、売上B・利益Aは成長投資、売上C・在庫Aは資金回収の優先候補です。

分類後は、発注、広告、商品ページ、値下げ、終売の担当と期限を決めます。ABC分析を毎月の一覧表で終わらせず、限られた時間と資金をどこへ配分するかという実務判断へつなげることが、売上と利益を同時に改善するポイントです。

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